探究科 座談会その3-前編-

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SPECIAL

2021.10.26UP

肩書をひっさげて、個性あふれる新探究科、リスタートです!

MEMBER

池谷陽平探究ドライバー

髙木草太探究デザイナー

眞鍋綾探究アーティスト

上月龍太郎探究クリエイター

佐藤佑平探究ストラテジスト

牛込紘太探究キュレーター

生徒たちに自分の個性を活かして
もらうために、まずは先生から。

新メンバーが加わることで6人体制となった探究チーム。メンバーが変わっただけではなく、新しく『肩書』をつけることで、役割分担を明確にしつつ、さらにそれぞれの個性も見極めようとしているようです。そうすることによって、生徒たちにはどういったメリットが生まれるのでしょうか。今回もテーマがあるようでないような井戸端会議が始まります。

収録日:2021年6月10日

Theme1

肩書があれば、役割も明確に?
先生もそれぞれに個性を活かそう。


池谷

前回の座談会から年度も変わり、2021年度から新しく2名の先生が探究科に参加してくれました! 毎年、メンバーの一人ひとりに肩書をつけるための会議は超重要です。それも『部長』や『主任』といった一般的なものではなくて、まったくオリジナルのもの。例えば僕は『探究ドライバー』です。ということで今日の最初のテーマは、なぜこういった肩書をつけたのかについて話したいと思っています。


上月

すぐに「これだ!」って決まった人もいれば、紆余曲折を経てたどり着いた人もいますよね。


池谷

そうやね。この肩書は探究科におけるそれぞれの先生の役割を示していると同時に、それぞれの個性も表していると僕は思ってて。そもそも学校の中で先生同士が集まってチームを組むってこと自体が少ないし、さらにメンバーの個性を活かした役割を与えてプロジェクトを進めている我々追手門の探究科ってそうとう珍しいと思うんよね。


髙木

たしかに『探究』っていう教科は、生徒の個性を活かしたり、見つけたり、伸ばしたりするきっかけを見つける場所じゃないといけないわけで、それを担う先生たちもそれぞれに個性が活かせるって大事だよね。


池谷

その通り。だけど教育現場で先生たちが個性を活かすことって意外と難しいやん? そんな中でここにいる6人は自分の個性を消すことなく授業で発揮してくれていると思うねん。だから一人ひとりの肩書の誕生までを振り返りつつ、なぜ大人になっても個性を発揮しつづけられるのかに迫れるといいな。


眞鍋

たしか池谷先生を除いて、最初に肩書が決まったのは髙木先生でしたよね?


髙木

うん。『探究デザイナー』っていう肩書はもともと池谷先生がつけていたんですよね。僕は前に勤めていた会社では『ラーニングデザイナー』って肩書だったし、すごくフィットしています。


池谷

髙木先生は『探究デザイナー』という役割をどのように捉えていますか?


髙木

さっきも言った通り『探究科』はチームで動いているので、たくさんのアイデアや意見が出てきます。それらを整理して、見栄えも良くして、受け手に喜ばれるように掲示するっていうのが、ここで言う『デザイナー』の役割だと思っています。要するにさまざまな要素を、生徒中心に考えて構成できる人。「生徒たちにどんなメリットがあるのか」をちゃんと考えるのが仕事かな。

『探究デザイナー』という肩書がすごくフィットしたと話す髙木先生。


池谷

なるほどね。髙木先生と同じく、すぐに決まったのは眞鍋先生でした。


眞鍋

はい。いろいろと候補は出ていましたけど、最終的には『探究アーティスト』ですね。


髙木

『探究ショットガン』とか『探究マシンガン』もあったよね。眞鍋先生は探究科に入ってきた時に「私、暴れますから!」みたいな宣言をしていた気がする(笑)


池谷

頭の中にあるものをどんどん出してくれるからね。それができる環境が自分に合っていると思う?


眞鍋

はい、そう思います。そういう動き方を許してくれるのって、このチーム以外にないですから(笑)。探究科に入った当時、私はまだ探究の授業を持ったこともなくて、わりと緊張していたんですよね。それに自分の思いを枠にはめて考えることも苦手だったから、『アーティスト』とか『マシンガン』とか言ってもらえて、息がしやすくなったかな。「暴れてもいいんやで」って言われている気がしたんです。


池谷

自分を存分に発揮できているようで、よかったです(笑)。上月先生は『探究クリエイター』。どうやって肩書が決まったか覚えてる?


上月

たしか池谷先生がつけてくれたんですよね。それを言われてはじめて「僕はクリエイターなんだ」って存在価値を見出しましたね。

上月先生は『クリエイター』としての自覚はなかったとのこと。


池谷

じゃあそれまでは自分が『クリエイター』という肩書に向いていると考えたこともなかったの?


上月

自覚はなかったですね。実は高校時代の部活でも同じような経験をしていて「上月はキャプテンにしておかないと危ない」という理由で、キャプテンに任命されたんですよ。つまり責任を背負わせておくことで、力を発揮できるタイプだってことだと思います。だから『クリエイター』と言われたときも「それなら僕は『クリエイター』に相応しいことをやろう」って考えるようになりましたね。先ほどから出ているように探究科はチームで動いているので、僕は僕なりに『クリエイター』としての役割に徹していれば、周りに自分ができないことをやってくれる人がいますから。


池谷

なるほどね。肩書がついたことで、役割を見出すパターンもあるってことか。そしてようやく新メンバーやね。まず佐藤先生は『探究ストラテジスト』、そして牛込先生が『探究キュレーター』です。2人ともほぼ同時に決まったよね。


佐藤

そうですね。牛込先生から『探究ファンタジスタ』って案も出ていましたけど(笑)


牛込

しかもそれで決まりそうな空気になっていたよね(笑)。結果的に『ストラテジスト』でよかったよ。


池谷

佐藤先生は、この肩書にどういう印象を持ってる?


佐藤

上月先生と近いんですけど、肩書ができたことで、それが目標になって「この路線で頑張ろう」って思いましたね。あと僕からすると、この探究科のメンバーって、めちゃくちゃポジティブな人たちなんですよ。


池谷

誰も後ろを振り向かないからね(笑)


佐藤

でも僕は真逆で、リスクばかりを気にして、「何か欠陥がないか」みたいなことを考えてしまうんです。そういう意味でも、「物事を冷静に分析する」という役割はすごく合っていると思います。


池谷

頼もしい。全部、分析してもらおう(笑)


上月

我々は穴だらけにしよう!


髙木

これまでは一点突破ばかりで、リスクも欠陥も多かったのは事実だし(笑)


池谷

そうそう。探究科って前例のない授業をやっているから、活動していく中で失敗や反省が当然ある。それを事前に防げるなら、それに越したことはないし、事後に分析して次に活かせるなら、チームとしても生徒のためにもかなりいい状態になるよね。それをできる人が、佐藤先生が来るまで誰もいなかったから(笑)

4月から探究チームに加わった『探究ストラテジスト』の佐藤先生。


眞鍋

牛込先生ははじめから探究科を担当すると決まった状態で追手門に転職されたこともあってか、肩書の候補は一番多かったですよね。


牛込

数ある中でも『キュレーター』でよかったと思います。僕もどちらかというと最悪を想定して動くタイプ。さまざまな取り組みや物事が「本当に問題ない」と言えるように精査して「足りていないものは何か」を考えたり、必要に応じて持ってきたりするのが得意なんです。そうして出来上がったプログラムを管理、運用しながら、「どのタイミングで、どれを出すか」を決めるのが、『ドライバー』である池谷先生の役割だと思っています。


池谷

なるほど。改めて全員の肩書や役割をみると、すごくバランスが取れたチームになったと思うよね。

探究は生徒の個性を見つけて、活かす場所。
それを担う先生たちも、それぞれの
個性を活かせることが大事。

Theme2

自分の強みは自分で気づくもの?
それとも他者に気づかされるもの??


池谷

ここまで肩書に込められた意味や、つけられた経緯を振り返ってきたけど、次はそれらが自身の強みと関連しているかを聞いていきます。


髙木

それって自分ではなかなか分からないかも。みんな、自分の強みって言語化できる?


牛込

「強み」と言えるのかどうかは分からないけど、僕って“器用貧乏”なんですよね。だからいろいろな場面でいろいろな役割をまっとうできると思っています。何か足りないところがあるなら、自分がそこを補おうとする意欲が他の人よりも高いんです。それをやり続ければ、自分にとってもチームにとってもプラスだし、プロジェクトの達成にも貢献できるかなと。


佐藤

僕の中では、自分の口から言う「自分の強み」って、「それに関しては、自分の右に出る者はいない」といえるものっていうくらいハードルが高い扱いなんですね。いま牛込先生が話された強みは僕から見ていても「たしかにそうだ」って思うけど、自分のこととなると、たかが自分の持っている言葉の中から選ばされているようで、違和感を感じます。


池谷

ちなみに他人から言われる「佐藤先生ってここが強みだよね」みたいなことはあるの?


佐藤

はい。自分では言いにくいんですけど……「謙虚さ」ですかね(笑)


髙木

「自分の強みは謙虚なところです!」って、その文章の中に矛盾があるからね(笑)。たしかに言いづらい。


眞鍋

でも他人から言われて気づけることも多いですよね。それが本当にそうなのかは別として。


池谷

眞鍋先生は、他人から言われた経験ってあるの?


眞鍋

あります。これまで自分では「即興性」が強みだと思っていて、人からもそれに近いことを言われることが多かったのですが、『人の強みを見つけて伝える』ワークショップに参加して言われたのが「愛情深さ」でした。びっくりしたんですけど、徐々に違和感がなくなってきて、今では自分の強みだと感じています。

「愛情」が自分の強みだと気づかされたと話す『探究アーティスト』眞鍋先生。


池谷

他人から新しい強みを気付かされたってことね。じゃあ髙木先生は自分の強みをどういった部分だと思ってる?


髙木

まずは「目立つのが好き」ってところですかね。僕は今よりも少し若かった頃、派手な色の服ばかりを着ていました。ネオンサインみたいな色をまとって歩くのは緊張もするけど、好きだからやろうとするし、できるわけです。根底にはそれがあるから、仕事で目立つ必要があるポジションになっても別にストレスじゃないんですよね。これがもしも「目立つのが嫌い」だったら、意識的に「目立とう!」としないといけないわけで、それはかなり苦しかったと思います。


牛込

そう言えば以前、他の先生と会話をしている中で、髙木先生の強みの話になりましたよ。その時は「懐に入るのがうまくて、気がつくと髙木先生のペースになっている」という結論になりました。たしかに他の人だと、会話にいきなり入ってこられたら嫌だけど、髙木先生は自然と入ってこれるし、その上で場の空気を盛り上げるのがめちゃくちゃうまいですよね。


髙木

それは初めて聞いたけど嬉しい(笑)。なぜならそれこそ自分がやるべき役割だと思っていて、自分の中では意識的にやっていることだからね。


池谷

なるほど。つまり自分が意識的にやっていることを、他の人がその人の強みだと認識する場合もあるんやね。じゃあ上月先生はどう?


上月

「好奇心旺盛」なところですね。教師という職業をやっていると、いろいろな個性や興味を持った生徒と接するじゃないですか。それなのに自分が特定のことにしかアンテナを張っていなかったら、僕にハマらない生徒との距離はどんどん離れていってしまいます。でも僕は40人の生徒がいるとして、それぞれが興味のある40個を、苦もなく調べることができる。


佐藤

「本を読んだら、そこに書いてあったことが生徒に響くか、次の日に試す」って言っていますよね。それができるのは、上月先生らしさだと思います。


上月

ありがとう! 僕は池谷先生の強みが気になりますけどね。


池谷

さっきの眞鍋先生と同じで、僕も「強みを見つけるワークショップ」に何度か参加して、その度にいろいろ言ってもらえることはあるんだけど、ぜんぶ忘れてしまうんよね。というのも、毎回まったく自覚したことないことばかり言われるし、言われたからと言って「そうしないと」って思うこともないから。

今回も司会進行役は『探究ドライバー』の池谷先生です。


髙木

おそらく池谷先生にとって、納得できるものじゃなかったんでしょうね。


池谷

そうなのかもね。そもそも自分の強みとか芯と言えるようなものもないから。


髙木

でもだからこそ、新しいことに挑戦するときに抵抗はないでしょ?


池谷

うん、それはまったくない。ちなみにこれまでずっと周りをサポートする側ばかりの人生で、自分の意見を主張することを控えてきたけど、最近気がついたことがあって。それは常に新しいことに挑んでいないと、自分のモチベーションを保てないってこと。40歳にして、そういう自分に自覚してしまったから、ちょっとしたややこしさはあるかな(笑)

自分が意識的にやっていることを
他の人がその人の強みと
認識する場合もある。

Theme3

自分の個性に気がついた、
人生のターニングポイントとは?


池谷

前編の最後は、ここにいるメンバーがいつ“自身の個性”に気がついたのかを聞いていきます。なぜならさっき言った通り、僕はここ数年でようやく自分のキャラクターを自覚するようになったけど、他の5人は僕が出会った時に、すでにそれを持ち合わせていたし、仕事でも発揮していると思うんよね。


上月

たしかに個性派が揃っていますからね(笑)


池谷

そうそう。生徒たちには、ここにいる先生たちのように、自分の個性を活かした人生を送ってほしいし、少なくとも学校にいる6年間はそうあってほしいと思っているから。それを6年間つづけることができれば、どこかのタイミングで自分に価値を見出して、ひとつの個として成り立っていけると強く感じているんやけど、それって現在の画一的な教育の中では、なかなか難しい状況にあるんよね。


佐藤

受験をゴールとした偏差値重視の教育ってことですよね。たしかにその中に「自分の個性を見つける」みたいなフェーズはまったくないので……。


池谷

うん。だけど探究科の先生はちゃんとそれぞれに自分の個性を自覚しているやん? 髙木先生は外国の教育を受けてきたから環境が違うけど、他の4人は普通に日本の学校で学び、成長してきたのに、なんで個性を見つけられて、かつそれを維持できたのかなっていう疑問を解決したくて。


上月

なるほど。それで言うと、僕の場合は大学時代に経験したGUのアルバイトがターニングポイントになっています。それまでに属してきたコミュニティとは、まったくの別物だったので、すべての出来事が新鮮でした。


池谷

バイト先での人との出会いが上月先生を変えたってことか。具体的には、どういうこと?


上月

僕は高校で陸上部、大学でラクロス部と、基本的には男子が多い社会で活動してきました。だけどGUは女性が中心だったんです。さらに自分でコーディネートした服装で店舗に立ったり、大きな声で「いらっしゃいませ」って言ったり、そして接客をしたり。要するに「人に見られる」っていうハードルを感じたんですよね。その時にはじめて客観的に自分を観察するってことができたと思います。


池谷

「他人からどう見られるか」「どのように人と接するか」を考えたことが、自分を見直すタイミングだったと。その結果、自分の個性に気がつけたのかな?


上月

まあ、それをきっかけに徐々に変わっていった感じですね。そもそも僕の通っていた高校は進学校だったので、周りには勉強に対してかなりの熱量を持った同級生がいたんですよね。でもGUには芸大に通っている人が多くて。彼ら・彼女たちは、僕から見るとめちゃくちゃ自由に生きていて、それを知った時には嫉妬に近い感情を抱きましたね。


眞鍋

その人たちと比べて、自分は自由じゃないって感じたから?


上月

そうやね。そこにいた芸大生たちは、例えば何かを表現したり、自分とは違う他人を演じたり、同世代なのにそれまで僕が考えたこともないような経験を当たり前のようにやっていたんよね。だからと言って自分もアーティストや役者になりたいと思ったわけではないけれど「じゃあ僕はこのコミュニティの中で、どうやって自分を出していこうかな」って考えるきっかけにはなりましたね。


髙木

それまでの自分が知らなかった世界に触れることがきっかけになるということはあるだろうね。


池谷

牛込先生には自分の個性に気づくターニングポイントってありましたか?


牛込

これと言った明確なタイミングはなかったけれど、ラグビーを続ける中で見つけたかな。

ラグビーに青春をかけた『探究キュレーター』の牛込先生。


池谷

スポーツってやっている人の性格がモロに出るし、特に団体競技はポジションによってさまざまな役割があるからね。


牛込

そうそう。僕の場合は、自分が点を取るよりも、点取り屋をアシストしたり、得点する場面を作り出したりすることに面白みを感じるようになったんだよね。


池谷

裏方に徹するというか、自分が目立たなくてもチームが勝つための動きをする感じやね。


牛込

そうですね。それは仕事をするようになってからも同じで、他人を引き立たせることに魅力を感じるかな。自分が最大限のサポートをして、それを受けた人が成果を残せたら、自分のことのように嬉しいから。その気持ちは常に持っているよ。

生徒たちはここにいる先生のように、
少なくとも学校にいる6年間は
自分の個性を活かしてほしい。

(後編は11月2日公開予定)

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