SATOYUHEI SATOYUHEI

数学科 佐藤佑平

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TEACHER

2021.01.29UP

先入観を捨てれば見えてくる、 一見対極にある数学と探究の共通点。

PROFILE

佐藤佑平 数学科/探究科

  • 出身

    大阪府大阪市

  • お気に入り

    切り干し大根、滝、甘いもの

  • 授業でもっとも大切にしていること

    空気感

Theme1

数学だって、正解だけを求めない。
プロセスにこそ個性と意味を。

僕が数学の教師になることを選んだのにはふたつの理由があります。ひとつは「他人の人生に直接的に関われる」こと。もうひとつは「好きな分野で楽しく働ける」ということ。その両方を実現できるのがこの仕事でした。「数学が苦手」という生徒は多いと思います。でもそれは「できない」と思い込んでいるだけかもしれません。僕も高校に入るまでは、もっとも苦手とする科目でした。それを変えてくれたのが「俺は数学ができる」と豪語する同級生です。自慢されるのが悔しくてやる気になりました(笑)。そこから少しずつ苦手意識を克服していって、最終的には大学と大学院で数学を専攻。一時期は数学者の道も考えるまでになりましたね。

大学院での2年間は、数学のことだけを考える毎日を過ごします。その時は“問題を解く”というより、いわゆる研究がメインでした。例えば一定の枠組みの中で自分なりの仮説を立てて、それを証明していくという、言わば“数学そのものをつくる”ような工程。それらは非常にクリエイティブで楽しい時間でしたね。そしてその経験は教師となった今でも活きています。そのひとつの例が、正解だけを求めない授業形式をとっていること。もちろん数学なので、答えはひとつかもしれませんが、そこにたどり着くまでのプロセスは複数存在します。そしてどんなルートを選ぶかによって、同じ答えでも意味や説得力がまるっきり変わる世界なんですよね。そもそも問題を解くだけなら、授業時間にやる必要はありません。せっかく学校に来てクラスメイトと集まっている場なので、教科書的なアプローチ以外も知ってほしいと思っています。これからも解き方を“教える場”ではなく、解き方を“考える場”として授業を展開していきたいですね。

ちなみに数学には答えがあり、探究には正解が存在しないもの。だからこの2つは対極にあると思われるかもしれません。しかし僕は数学と探究には多くの共通点があると思っています。例えば探究の授業ではアウトプットとして作品があります。生徒たちはさまざまに考えを巡らせて、試行錯誤することで、自分の気持ちや価値観などをカタチにするわけです。そうして生まれる作品はそれぞれに異なっていて、そこから他者との違いに気づいたり、制作過程の中で自分自身を理解したりすることに大きな意味を見出すのが探究です。その点において僕が考える数学のあり方も同じ。「作品」が「答え」に変わるだけで、過程が重要という点では共通しています。つまり大事なのは、先入観を捨てられるかどうかということ。嫌われ者の数学ですが、本当はもっと楽しいものなんですよ(笑)

「作品」が「答え」になるだけ。
過程が重要という点で
探究と数学は共通している。

Theme2

「教える」のではなく、ともに学ぶ。
一人ひとりの可能性を潰させない。

授業の中で意識しているのは、僕の意見がそのまま生徒の正解にならないようにすること。もともと「先生が言っていたから正しい」という考え方には違和感を抱いていました。だから数学でも探究でも、生徒と同じ目線に立って一緒に活動しているという感覚で取り組んでいます。実際、生徒たちから出てくるアイデアはどれも興味深く、勉強になるものばかり。もちろん数学の知識では負けませんが、僕が正解だと思っているものも無数に存在する道のひとつでしかありません。例えば僕は図形を用いて答えを導き出すアプローチは正直に言って苦手。でもそれを得意とする生徒もいて、一人ひとりに違ったルートがあるはずです。その可能性を僕の判断だけで潰してしまうのはあまりにもったいないと思っています。

この学校に入って驚かされたのは、生徒が主体となって行われるイベントの数々です。体育祭や運動会、3年生を送る会などの運営をするなんて、僕の学生時代には考えられないこと。だからこそ生徒が持つ学力以外の魅力も正しく評価してあげられる仕組みができればいいと感じるようになりました。やはり定期テストで測れることなんて、生徒のごく一部分だけですから。例えば「人の嫌がる仕事を率先してできる」とか「思いやりのある行動ができる」とか、人にはさまざまな魅力があります。もちろんそういった価値を一定の基準をもとに評価するのは難しいことではありますが、教育現場が抱える課題のひとつであることは間違いありません。

また学校におけるクラブ活動も前時代的な価値観が色濃く残っていると思います。例えば運動部であれば「勝つ」ことが正義とされ、それを実現するためだけに指導がされますよね。それも間違いではないのですが、あくまでいろいろある目的の中のひとつなはずです。選手自身が「なぜ自分はこの競技をやっているのか」ということを考える余地があってもいいと思います。その結果「勝つ」以外の目的が生まれるチームもあるかもしれません。だってクラブって、少なからず興味や好きという気持ちがあってやっていますよね? にも関わらず勝つことだけが目的だと、楽しさも減ってしまいそうで……。つまりクラブ活動にも探究的な考え方が必要だと感じます。しかもその結果としてチームの勝利などの成功体験までも得られれば理想的ですよね。

定期テストで測れるのは一部だけ。
それ以外の魅力を正しく評価できるかが
これからの教育の課題のひとつ。

PAST 過去

保育園のお遊戯会での写真です。小さい頃は1人を極端に嫌い、泣き虫で甘えん坊で、ただ聞かん坊でもあり。とにかく手のかかる子だったとよく言われます。

PRESENT 現在

2021.01.28

FUTURE 未来

何をしているのかは全く想像つきませんが、自分の信念は曲げず、やりたいと思えることに全力で取り組んでいると思います。おそらく幸せです。

FAVORITES

エメリヤーエンコ・ヒョードル

小中学時代の僕のヒーローです。当時の圧倒的強さは今でも鮮明に覚えています。

MY ITEM

経験

成功・失敗・挫折・達成など今までの人生で経験したこと全てが、今の自分を形成しています。

VOICE

01

教育業界のココを変えたい!

先入観です。変化してきているようで、意外と変わった方が良いところが変わってない。こうあるべきという先入観はなくしたいです。

02

追手門学院中・高等学校にコレを導入したい!

研究室。1人で長時間、ひとつのことに没頭できる空間があれば嬉しいです。

03

生徒や保護者のみなさまに言いたい!

大人になるにつれ失敗することが難しくなってくるので、高校生の内にたくさん失敗しましょう。そしてその失敗を次に活かしましょう。それが成長です。

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