校長ブログ

校長 木内 淳詞 Junji Kiuchi

2022.08.26

友だち幻想、過度の共感

 昨日の始業式の校長式辞で、上の『友だち幻想』という本を紹介しました。以前に、このブログでも紹介しているのですが、友だち関係がぎくしゃくしがちな2学期が始まるこの時期に、ぜひ読んでほしい本です。
 このちくまプリマ―新書は、あまり難しい表現はせずに、一方で内容的には大人の読書にも十分耐えうる深いものになっています。親子で同じ本を読んで意見交換をすることも可能な本であると考えます。
 殊に、『友だち幻想』は、私が2008年に初版本を購入して読んで以来、10年以上の歳月が流れているのですが、いまだにロングセラーとして読まれ続けています。この本で菅野先生は、友だち同士に必要とされる関係を、「同質性」から「並存性」へ、そして「フィーリング共有関係」から「ルール関係」へと変えていこうと訴えておられます。
 子供たちの関係において、共感ということが過度に要求され、苦しんでいる子がいるということも少なからず耳にします。確かに共感というのは人間が身につけた大切な能力だと思いますが、それを他者から無理に要求されるというのは、おかしなことです。過日、このブログでご紹介した人類学の本の中には、人間の間の戦争・紛争の多くが過度の共感によるものだと書いてありました。テレビのバラエティー番組で、出演者が大きな笑い声をあげてぱちぱちと手をたたくシーンをよく見かけます。恐ろしいことに、その光景は、中・高生たちの間にも見られるものです。誰かが何かを言えば、それに対する「共感」をそういった身振りで表現しなければならないと、テレビを通じて無意識のままに肯定し、受け入れているのかもしれません。
 本の内容については、ここで詳細に語るわけにはいきませんので、ぜひ書店で手に取っていただき、お子さまと共にお読みいただけますと幸いです。