校長ブログ

校長 木内 淳詞 Junji Kiuchi

2022.05.19

訃報 中川先生

 本校の元・教員の中川貴先生がご逝去されたとの連絡が入りました。
 私自身、追手門学院中・高等学校の教員としてご一緒させていたのはわずか1年でしたが、初めての出会いの時の印象が強烈に残っています。私が大学の4回生で、本校の教員採用試験で安威の校舎に行った時のことでした。大勢いらっしゃる面接官の中に、白髪で眼鏡の奥にきらりと輝く目で、こちらをしっかりと見ながら、ノートにメモを取られている先生がいらっしゃいました。それが中川先生でした。わずか1年でしたが、大学の後輩ということで可愛がっていただき、先生の教育観についてもお話を伺う機会に恵まれました。
 上の写真は、中川先生が刊行された、本校の高校21期生の修学旅行の記録です。21期生というと、今年度で68歳になられる方々です。話を伺うと今の大人しい生徒たちと比べると、かなり「やんちゃ」な生徒たちだったようですが、この21期生の修学旅行の在り方が、その後の本校の生活指導の在り方へとつながっていきます。後に、T方式(洞爺湖方式)と呼ばれるものです。中川先生は、ワープロを使いこなすことはできなかったのですが、この本を出版するという目的のために、ワープロを習われたそうです。50歳を過ぎてからのスキー、60歳を過ぎてからのピアノなど、中川先生を見ていると、It's never too late to learn. という言葉がリアルに感じられます。
 本の表紙裏表紙を開いたところには、次の言葉が記されています。

 教育とは「不公平」が原則でなければならない。受ける側が千差万別であるからである。但し世間には通用しない。

 本文中のこの言葉は、先生から直接聞いた記憶があります。若い頃の私には、俄かには理解できなかったのですが、ひとり一人の生徒を教育の対象と考えたときに、非常に大切なポイントを指摘されているように思います。

 短期間の経験ではあったが、我々も学んだ。「事故なく」という結果ではなく、如何にして「自主的な生徒集団」を「民主的」に育てていくか、その過程としてとらえることが基本である。

 時代は変わっていますが、今も変わらず本校として大切にしたいことが記されています。中川先生、ありがとうございました。あの鋭い目で、今後も本校のことを見守ってください。