悲しみ
『悲しみの秘儀』。若松英輔先生の著書です。綺麗な装丁ですね。
個人的なことになりますが、この夏は身内で悲しいことがあり、また、お世話になった方もお亡くなりになったりして、本当にさみしい思いで日々を過ごしています。そのような中ではありますが、若松先生の著書を読んで、気持ちを切り替えることがよくあります。
孤立は関係のもつれの結果だが、孤独は人間であることの宿命なのかもしれない。孤立から私たちを解き放つのは、他者と対話しようとする努力である。だが、問題が孤独の場合、対話の相手は自己になる。
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大切な人を喪った者を最初に襲うのは悲しみではなく、孤独である。だが、逝きし者をめぐる孤独は、不在の経験ではない。それは、ふれ得ないことへの嘆きである。悲しいのは、愛するものが存在しないからではなくて、手が届かないところにいるからだ。
だが、遠いところにいるからこそ、その存在を強く感じる。姿が見えないから、一層近くにその人を強く認識することはある。この不思議な事象を喚起する働きを人は、永く、情愛と呼んできた。
この本は文庫にもなっています。関心を持たれた方は、ぜひご一読を。