校長ブログ

校長 木内 淳詞 Junji Kiuchi

2021.04.28

『魂にふれる』

 批評家・随筆家であり、東京工業大学の教授でもある、若松英輔先生が『魂にふれる』という本の増補新版を3月に刊行されました。2011年の東北の震災のことにも触れられており、また、先生がNHKの「100分 de 名著」の3月のゲスト講師で「災害を考える」というテーマでお話しされていた関係で、私も興味を持ち、何度か繰り返して読んでいます。
 この本のページをめくると、目次の前に次のような詩が目に入ります。

彼岸まで

彼岸という
言葉のように
人は 亡き者の
姿を探して
彼方へと向かう

だが 彼方は
遠くでは
ないのかも
しれない

人は 亡き者と
巡り会おうと
彼方を求める

だが 彼方とは
人の心の
別の呼び名かも
知れない

亡き者たちは
生者が
気が付かない姿で
いつも傍らに
いるのかもしれない

 東北の震災の話題に始まり、先生のお亡くなりになったパートナーの方のことや、その他のすでに亡くなられた方々の言葉を紹介しながら、私たちと死者との関係に話が及びます。このブログで私がそのまとめをするなど、到底できることではありませんので、少しでも関心を持たれた方がいらっしゃれば、お読みいただきたいと思います。紹介された方々の言葉に触れることで、先生のお人柄にも触れることができ、また、私自身、亡くなった父親をはじめとした人々の存在を感じ、その人たちとの関係を見直す契機ともなりました。

 最後に、もう少しだけ、この本の中から引用しておきます。


 死の経験者は皆無でも、死者は、万人のうちに共に生きている。死者の姿は見えない。見えないものに出会うことを望むなら、見えないものを大切にしなくてはならない。
 それは、死者と君の関係においてだけでなく、君と君の愛する人のためにも、とても大切なことなんだ。目に見えず、耳に聞こえず、手に触れることのできないもの、さらに語り得ないものであっても、存在していて、それが人と人を結び付けていることを、いつも覚えていてほしい。