校長ブログ

校長 木内 淳詞 Junji Kiuchi

2021.01.09

『ビジネスの未来』、教育の未来

 昨年末に読んで感銘を受けた本です。山口周さんの『ビジネスの未来』。友人に勧められて『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』を読んで以来、新刊が出るたびに山口さんの著作に触れています。25年ほど前に生徒募集の仕事に携わるようになって以来、文学ばかり読んでいた生活から、ビジネスを含めて様々な領域の本を読むようになりました。
 山口さんは、ビジネス書を書かれる人には珍しく、人文学の観点からも社会やビジネスのあり方を捉える方です。自ずと教育についても言及されるのですが、この本では、教育界に身を置く私にとっても、身が引き締まるような言葉がたくさん書かれていました。最後にこの本からの引用を記しておきます。


 数多くの国際機関や企業と社会変革プロジェクトで協働した社会システムデザイナーのデイヴィッド・ストローは、何か複雑な問題を解決しようとするとき、まず必要なのは「自分自身が、解決しようとしている問題を引き起こすシステムの一部なのだ」ということに気づくことだと指摘しています。いかなる問題であれ、個々のプレイヤーがどのようにしてシステムに関わり、そして無意識のうちに意図せざる問題の発生に関わっているのかを意識することなしにシステムの改善がもたらされることはありません。なぜなら、そのシステムの中で、参加しているプレイヤーがもっとも自由にコントロールできるものは、システムそのものでも、あるいはシステムに参加している他者でもなく、自分自身でしかないからです。


 しかし私は、これまでに、多くの複雑な問題に関わった経験から、このように指摘しています。というのも、このような複雑な問題を解くためにシステムを分析すると、多くの場合、人々が実現しているのは、彼らがタテマエとして口にしている「望ましい未来」ではなく、彼らがホンネとして「いま望んでいること」そのものであることがほとんどだからです。
 これはつまり、私たち全員が、現在の教育システムから少なからず見返りを受け取っており、その見返りが、システムを変えることで失われることを望んでいない、ということを意味します。端的に言えば、現在の教育システムを生み出しているのは、いまこの本を読んでいるあなた自身だということです。この認識を真ん中におかず、文科省が悪い、教育現場が悪い、塾が諸悪の根源だと声を荒げたところで、今日の問題が解決することは永遠にありません。

 本当に耳の痛い指摘ですが、これらをしっかりと受け止めて新たな年をスタートさせようと思います。