校長ブログ

校長 木内 淳詞 Junji Kiuchi

2020.05.18

各学年の登校日

 今週より、各学年ごとに登校日を設けていますので、ようやく生徒が登校するようになりました。
 生徒のいない校舎ほど寂しいものはありません。まだ授業はできませんが、友だちと合って話をするのを楽しんだり、新しい担任の先生と挨拶したりするだけでも、この登校日の設定には意義があると感じました。
 初めての登校の日でしたので、始業式の位置づけで、放送により、私から挨拶をいたしました。それぞれの学年ごとに、また、学年を半分に割って投稿させていますので、その都度話をしないといけませんので、いつもとは違って、原稿を用意して臨みました。学年ごとに少し内容を変えましたが、高1用のものを掲載させていただきます。

 皆さん、おはようございます。

 ようやく学校に来ることができましたね。桜の季節にゆっくりとお花見ができず、ゴールデン・ウイークにお出かけもできず、大変な時期を過ごされたと思います。テレビなどでは、超人的な働きをしている医療関係者への賛辞と、一方で「今さえよければそれでいい、自分だけよければそれでいい」という考えで行動する人に対する監視と過度の批判にあふれています。マスコミは、そういう極端なことをネタにしないと興味を持ってもらえないからかもしれません。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の状況をなんとか今のような状況に抑えて、皆さんが試運転の状況であろうと、こうやって週1回程度は学校に来てもよい、ということになったのは、外出を控え、予定していた楽しいことも見直して、ご家庭中心の生活をしてきた、皆さんを含めた大多数の人たちの力だと思います。テレビでは称賛されませんが、私としては皆さんに感謝の言葉を伝えたいと思います。ありがとうございます。

 一方で、学校に行けない時間を経験することで、皆さんの中で学校というものの持つ意義を捉えなおすことができたかもしれません。学校でも、その役割についての見直しを数年前から考えてきたのですが、今後はますますその動きを進めていくことになるかもしれません。本校がその理念や教育目標に沿って考えてきたことが、皮肉にも今回の感染症の結果、必然の動きとして社会の多くの人から認知されてきているように思います。ICTを活用した教育も、準備をして前年度から大きく進めてきた結果、数年前の本校ならば、とうてい実施できていなかったレベルの取り組みが可能になっています。オンライン授業という言葉をよく聞くようになりましたが、全国レベルで見ると、同時双方向型の指導ができている学校は、現状では全体の5%程度だという報道もありました。すべての先生が、カメラ・マイク付きのノートパソコンを持ち、さらにiPadまでもって仕事をしている学校など、数えるほどしかありません。しかし、そういう環境の整備は、他の学校や地域でも、今後どんどん広がっていくでしょう。ただ、私が感じるのは、環境整備をしただけでは、教育は変わらないということです。生徒の皆さんにもお伝えしたことがありますが、Fail early, fail often, but always fail forward. が大切です。早く取り組めば、早く失敗する、でも、その失敗したことから学んで修正すれば、その失敗は前向きな失敗、成功につながる失敗となるでしょう。私たちの取り組みは、今、そういう状況にあります。先生方だけではなく、皆さんにもそういう姿勢を持ってもらいたいと思います。あくまでICT活用は手段です。大切なのは、学びに向かう皆さんの姿勢が、よりよく変わっていくことだと思います。

 残念ながら、1年前のような状況に学校が完全に戻ることは容易ではないと思います。登校が正式に許可されても、毎日、中・高全員の生徒が通うことができるまでには、さらに時間が必要でしょう。オンラインでの学習と、オフラインでの学習の両方を考えねばなりません。そうなると、皆さんが学びについて何でも先生に依存する姿勢を持ち続ける限り、必要とされる力を身につけることはできなくなります。強制されないとできない学習は、今まで以上に成果が表れなくなります。また、経験したことから気づきを得て、自分の成長につなげる力は、今まで以上に大切になります。今日、ここで話を聞いている皆さんが、私や担任の先生からのメッセージを、確実に自分に対するメッセージだと受け止めて、自分を変化させていくことができる人になるのか、それとも、それを他人事として聞き流し、成長の機会を失う人になるのか、それが問われています。

 私たち教職員にとっても、今、そしてこれからどうしていくべきなのか、毎日悪戦苦闘しながら、考え、また、それを修正して、ということを繰り返しています。しかし、どうしてよいのか分からないときに、どうするべきかを考えて行動する力、それこそが、今後の社会において求められている力です。そして、その力こそが、私たち人間が動物たちと違う点なのでしょう。私たちの悪戦苦闘する姿が皆さんに伝わり、そのことが皆さんを成熟に導くことになれば、私たちはより良い学校に近づいているのだと思います。ぜひ、共に、より良い学校を作っていきましょう。ありがとうございました。