校長ブログ

校長 木内 淳詞 Junji Kiuchi

2020.05.21

なにがどうなろうと、たいしたことはありゃあせん

 追手門学院大学校友会から、冊子が届きました。2021年に結成50周年を迎える校友会の記念事業として開催された、宮本輝氏(芥川賞作家・追手門学院大学1期生)と真銅正宏氏(現・追手門学院大学学長)との対談をまとめたものです。
 タイトルは、『青が散る』から『野の春』まで。『野の春』は連作『流転の海』の第9巻(最終巻)のタイトルで、2018年に出版されました。そして、『青が散る』は、創設当時の追手門学院大学を舞台にした青春小説であり、その文庫本に宮本氏の烙印が押されたものが、毎年校友会から新入生へ記念品として贈呈されています。
 その追手門学院大学の建物は、まだ安威にありますが、隣接していた追手門学院中・高等学校の建物は、もう存在しません。中・高や大学の校舎に至る坂があり、生徒たちは追坂(おいざか)と呼んでおりました。春になりますと、様々な種類の桜が、少しずつ時間をずらすように咲いていく様子が見られ、卒業アルバムに載せるクラス写真の撮影場所に、この追坂を選ぶクラスがたくさんありました。『青が散る』の中には、この坂について描かれているページがあり、私にとって教師としての青春時代を過ごした場所を描いた小説として、今でも『青が散る』は大切に思える作品です。
 今回のブログのタイトルにしたのは、『流転の海』の中に出てくる、松坂熊吾という主人公の言葉です。宮本氏のお父様がモデルだとされています。「なにがどうなろうと、たいしたことはありゃあせん」。何か覚悟を決めないといけないときに、ふと私の頭にわいてくる言葉です。
 そして、対談の中の次の言葉も印象的でした。私は対談をライブで聞かせていただいたのですが、冊子を読んで、またその言葉がよみがえってきました。生徒の皆さんに送ります。

 若いときに、いい小説を読むべきなんです。いい小説というのは、やっぱり生死というものを必ず書いています。だから、確かに「今さえ楽しけりゃいい」っていうのも悪くありませんが、「ちょっと俺には難しいかな」「ちょっと背伸びせんと読みきらへんかな」っていうぐらいの、そういう文学作品っていうものに、学生のうちに挑戦してもらいたいですね。