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2021.09.08UP

【追手門探究科は何をやっている?#2】学習指導要領編②

たいそん 探究Driver

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追手門学院中・高等学校「探究科」

追手門学院中・高等学校の探究科は、教科として2020年に発足し、中学「総合的な学習の時間」、高校「総合的な探究の時間」を担当しています。

なので、もちろんそれぞれの学習指導要領に則った学習内容になるわけです。各学年週2時間ずつ設定されており、それぞれの授業プログラムを創造、実践、構築するプロセスにあります。

「総合的な学習(探究)の時間」は学校によって内容は大きく異なるのが現状であり、その解釈はさまざまです。また「探究的な学び」という言葉が出てきて以来、各教科内における探究的な学びと混同して使われることも多く、混乱を招いていることも確かです。

本校の「探究科」がやっていることを少しずつ紹介できればと思います。あくまでも中学校、高等学校の文脈で書かせていただきますので、あしからず!

今回は3回に分けて配信します!この記事は[SECTION2]。いってみましょう。

[SECTION1]日本の学校教育は、何をどのように育成しようとしているのか。
1-1:教育の目的
1-2:学校で何を育成するのか。新学習指導要領「資質・能力の三つの柱」
1-3:新学習指導要領「主体的、対話的で深い学び」で

[SECTION2]中高「総合的な学習(探究)の時間」
2-1:中高「総合的な学習(探究)の時間」の目標
2-2「総合的な学習(探究)の時間」の「資質・能力の三つの柱」
2-3:「総合的な学習(探究)の時間」の「主体的、対話的で深い学び」

[SECTION3]追手門中高「探究科」の考え方
3-1:目標(ヴィジョン、ミッション)
3-2:こんな資質・能力、育成できたらいいな
3-3:どういう方法で?

お馴染みの「オードラポーズ」(O-DRIVEのロゴにちなんだポーズです)

中高「総合的な学習(探究)の時間」

さて[SECTION1]でお話しした「日本の学校教育は、何をどのように育成しようとしているのか」を踏まえた上で「総合的な学習(探究)の時間」がいち教科としてどのように位置づけられ、「資質・能力の三つの柱」、「主体的、対話的で深い学び」がどのように規定されているのか見ていくことにしましょう。

中高「総合的な学習(探究)の時間」の目標

目標については、高校では少し高度になるような設定にはなっているようですが、ほぼ同じ内容です。また以下引用中の(1)(2)(3)がそれぞれ、資質・能力の三つの柱である、(1)「知識及び技能」、(2)「思考力、判断力、表現力」、(3)「学びに向かう力、人間性」に相当します。

中学校学習指導要領 「総合的な学習の時間」の目標

第1 目標
探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1)
探究的な学習の過程において、課題の解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究的な学習のよさを理解するようにする。
(2)
実社会や実生活の中から問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする。
(3)
探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、積極的に社会に参画しようとする態度を養う。

引用元:【総合的な学習の時間編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説

高等学校学習指導要領 「総合的な探究の時間」の目標

第1 目標
探究の見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1)
探究の過程において、課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究の意義や価値を理解するようにする。
(2)
実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし,自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする。
(3)
探究に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度を養う。

引用元:【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説

中学校での目標は、「よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成すること」
高等学校での目標は、(自己の在り方生き方を考えながら、)「よりよく課題を発見、解決するための資質・能力を育成すること」です。

中学校で育んだ「自己の生き方を考えていくための資質・能力」が前提としてあるため、高校では(自己の在り方生き方を考えながら)と、高校段階での資質・能力からは切り離したのでしょう。どちみち重要であることには変わりありませんね。

目標から分かることは、「総合的な学習(探究)の時間」とは、

「自己の在り方生き方」

「課題を発見、解決すること」

を扱う教科である、ということです。

自己の生き方を考えていくことは、次の三つで考えることができる。一つは、人や社会、自然との関わりにおいて、自らの生活や行動について考えていくことである。・・・(中略)・・・二つは,自分にとっての学ぶことの意味や価値を考えていくことである。・・・(中略)・・・そして、これら二つを生かしながら、学んだことを現在及び将来の自己の生き方につなげて考えることが三つ目である。学習の成果から達成感や自信をもち、自分のよさや可能性に気付き、自分の人生や将来、職業について考えていくことである。

引用元:【総合的な学習の時間編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説

よりよく課題を発見し解決していくとは、解決の道筋がすぐには明らかにならない課題や、唯一の正解が存在しない課題などについても、自らの知識や技能等を総合的に働かせて、目前の具体的な課題に粘り強く対処し解決しようとすることである。その際、生徒自身が課題を発見することが重要であり、・・・(後略)・・・

引用元:【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説

自己の(在り方)生き方についての考え方は中高とも共通しています。学びのコミュニティ時間軸の2観点で書かれていますね。

課題解決においても同じような表現が使われています。唯一の正解が存在しない課題に取り組むことも大切だなーと思いますが、課題を発見するという文言が高校から姿を見せたことに注目してみましょう。

課題を発見するとは、一つは、自分と課題との関係を明らかにすることである。もう一つは、実社会や実生活と課題との関係をはっきりさせることである。

引用元:【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説

つまりは「自己の在り方生き方」と「課題」との関係を明らかにすることかなと思います。自分の目に見えているものであったとしても、見ようとしない限り発見することはできません。これこそが、自律した学習者への第一歩かもしれませんね。

うちの探究Designer、Sota先生も見てますよ笑

また、中高「総合的な学習(探究)の時間」は共通して、「探究(的な)の見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して」行われます。ここで、「探究」という言葉が登場するわけです。

探究(的な)の見方・考え方とは、

各教科・科目等における見方・考え方を総合的・統合的に活用して、広範で複雑な事象を多様な角度から俯瞰(ふかん)して捉え、実社会・実生活の課題を探究し、自己の在り方生き方を問い続けるという総合的な学習(探究)の時間の特質に応じた見方・考え方

引用元:【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説

今「探究」というと、キーワード的に教科横断課題解決が流行っているのは、ここに由来するのでは?

今回の改訂から他教科の学習指導要領にも「探究」という言葉が現れています。教科を探究的に学ぶことと、探究の見方・考え方を働かせることは同じではないですね。「探究的に学んだ教科の見方・考え方を総合的に活用して、実社会の課題を探究し、自己の在り方生き方を考えるという探究の見方・考え方を働かせながら学ぶことで資質・能力を育成する」ということかな?無理やりですが。

にしても、各教科・科目等における見方・考え方を総合的・統合的に活用してって、すごいことが書いてありますよね。これを学校によっては週1しか設定されていないこの時間で。。。しかもどうやってすんの。。。みんな考えてるのかな。。。

総合的な学習(探究)の時間における学習の在り方「問題解決的な学習が発展的に繰り返されていく。これを探究と呼ぶ。」

「総合的な学習(探究)の時間」の「資質・能力の三つの柱」

学習指導要領の大枠と「総合的な学習(探究)の時間」でめざすものをざっと見てきました。じゃあ具体的に「総合的な学習(探究)の時間」の「資質・能力の三つの柱」って何なのか見ていく方がわかりやすいと思いますので、さっそくいってみましょう。

(1)知識及び技能の例

 ・ それぞれには特徴があり、多種多様に存在している(多様性)
 ・ それぞれに違いがあり、個別のよさをもっている(独自性)
 ・ 互いに関わりながらよさを生かしている(相互性)
 ・ 力を合わせ、目的の実現に向けて取り組む(協働性)
 ・ 物事には終わりがあり、限りがある(有限性)
 ・ 新しいものを創り出し、生み出していく(創造性)

引用元:【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説

どうですか?みなさんが考えていたような知識、技能だったでしょうか?中学においても「独自性」「相互性」「有限性」を例に挙げて説明されています。

このような知識、技能をみにつけることが、中学に記載の「探究的な学習のよさ」や、高校に記載の「探究の意義や価値」を理解するのに必要であると。その通りだと思います。

(2)思考力、判断力、表現力の例


思考力、判断力、表現力については、①から④の探究プロセスにおいて実際に使うことで育成。こちらも中学でほぼほぼ同じ図が用いられています。

課題を発見し、解決する教科であることからも、これがスパイラル的に進んでいく学びであることが強調されています。これをどう料理するか担当者で話し合えればいいですが、担任の+α仕事としてやっている学校がほとんどの状況ではなかなか難しいですよね。

外部のプログラムに飛びつくのも分かる気がしますが、目標から考えてもなんとか学校でデザインしたいですよね。これが容易でないことは理解した上で、なんとかしたいなーというのが私たちの想いでもあります。

(3)学びに向かう力、人間性等の例

先述した「自己の在り方生き方」を考えることに直結する力。このマインドセットがあってはじめて「やってみよう」が生まれるかもしれません。強制されてやってる中で気づくこともあるとは思いますが、プロセスはともあれ、1番大事な資質・能力だと個人的には思っています。

「総合的な学習(探究)の時間」の「主体的、対話的で深い学び」

では、どのように資質・能力を育成するのか、「総合的な学習(探究)の時間」バージョン「主体的、対話的で深い学び」に目を向けてみましょう。

「主体的な学び」の視点

「主体的な学び」とは、学習に積極的に取り組ませるだけでなく、学習後に自らの学びの成果や過程を振り返ることを通して、次の学びに主体的に取り組む態度を育む学びである。総合的な探究の時間においては、学習したことをまとめて表現し、そこからまた新たな課題を見付け、更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく過程を重視してきた。
こうした学習過程の中で生徒が主体的に学んでいく上では、課題設定と振り返りが重要となる。・・・(後略)・・・

引用元:【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説中高共通

繰り返しになってしまいますが、主体的に学ぶことは、「自己の在り方生き方」を考え続けるということではないかと。だから、自己との関わりで発見することから始まる課題設定自分なりの意味づけを行い方向性を定めるための振り返りが大切ですね。

「対話的な学び」の視点

 「対話的な学び」とは、他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深めるような学びである。以前より、他者とともに探究に取り組むことを大切にしてきたように、探究の過程を質的に高めていくためには、引き続き異なる多様な他者と力を合わせて課題の解決に向かうことが欠かせない。
ここで行われる異なる多様な他者と対話することには、次の三つの価値が考えられる。一つは、他者への説明による情報としての知識や技能の構造化である。生徒は身に付けた知識や技能を使って相手に説明して話すことで、つながりのある構造化された情報へと変容させていく。二つは、他者からの多様な情報収集である。多様な情報が他者から供給されることで、構造化は質的に高まるものと考えられる。三つは、他者とともに新たな知を創造する場の構築と課題解決に向けた行動化への期待などである。・・・(後略)・・・

引用元:総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説中高共通

難しい言い回しではありますが、、何かを発信するとき自分の中で処理、解釈し、媒体を選ぶと思います。そうやって表現された情報を共有することで集合知の質が高まり、新しいものが創造されるのではないか。当たり前ですよね笑

表現=プレゼンみたいな空気もありますが、生徒が解釈したり、媒体を選んだり、議論したり、正解を当てにいくのではなく正解を創るプロセスというか、違いを生かす経験というか、そんな場が学校には少ないんだろうなと感じます。

これがないと、せっかく培った知識や技能を間違った方向に使う可能性もあります。これは知識が豊富であればあるほどよく起きることではないでしょうか。

「深い学び」の視点

「深い学び」については、探究の過程を一層重視し、これまで以上に学習過程の質的向上を目指すことが求められる。探究の過程では、各教科で身に付けた「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」の資質・能力を活用・発揮する学習場面を何度も生み出すことが期待できる。それにより、各教科で身に付けた「知識及び技能」は関連付けられて概念化し、「思考力、判断力、表現力等」は活用場面と結び付いて汎用的なものとなり、多様な文脈で使えるものとなることが期待できる。
また、このように充実した学習の過程において、生徒は手応えをつかみ前向きで好ましい感覚を得ることが期待できる。そのことが、更なる学習過程の推進に向かう安定的で持続的な意志を涵養していく。・・・(後略)・・・

引用元:総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説中高共通

応用する、実践の場を設けるということですかね。そして、意志を涵養していく。。。重たすぎて抱えきれないかも。。。

次回に続く。。。!!!

[SECTION1]日本の学校教育は、何をどのように育成しようとしているのか。はコチラ!

[SECTION3]追手門中高「探究科」の考え方はコチラ!

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