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2021.09.13 中学 高校 新コース

[対談]それぞれの個性に合わせて、個別に対応していくことで、豊かな人生を。(後編)

坪谷ニュウエル郁子さんにお話をうかがいました

東京インターナショナルスクール 理事長、国際バカロレア日本大使である坪谷ニュウエル郁子さんのお話です。教育に対する想いや考えをぜひ皆さんに共有したいと思いました。来年度新設の「創造コース」のヒントもたくさん。後編です!

プロフィール

神奈川県茅ケ崎市出身。イリノイ州立西イリノイ大学修了、早稲田大学卒。
1985年イングリッシュスタジオ(現東京インターナショナルスクールグループ)設立、代表取締役就任、1995年東京インターナショナルスクールを設立。理事長就任。同校は国際バカロレアの認定校。
その経験が評価され、2012年、国際バカロレア(IB) 日本大使に就任。文部科学省とともに、教育の国際化の切り札となる国際バカロレアの普及に取り組んでいる。

それぞれの個性に合わせて、個別に対応していくことで、豊かな人生を。(後編)

基礎学力が高く、教師は真面目。躾までを教える日本の教育は素晴らしい。

ー世界中、さまざまな国の教育現場を知る坪谷さんから見た日本の教育ってどうなんでしょう。割と悪く言われることも多いんですが……。

日本の教育は悪い、ひどいって言う人、多いですよね。でもそうではない部分もたくさんあります。まず1つ目は、日本人って基礎学力が高い。これは世界有数レベルです。なぜなら文字が読めない人が、あまりいないですよね?

ーそうですね。しかも沖縄から北海道まで、どの地域にいっても言えることです。

そう。それってすごいことなんです。誰でも新聞が読める。あとどこのお店のレジでも、タクシーに乗っても、きちんと正しいお釣りが出てきます。やはり海外だと「合ってるかな?」って確認してしまいますから。

ーなるほど。そういう基礎学力ですね。

それと、海外の学校では教えない躾を学校で教えてくれる。これも素晴らしいですよね。自分の部屋の掃除もしないような子どもたちが、学校ではみんなで教室を掃除しています。それに栄養士さんが考えたバランスの良い給食があって、それを自分たちでサーブして、先生も一緒に「いただきます!」と食べる。そういう習慣を学校で教えているんですよね。

ー日本では当たり前の光景ですが、海外の学校ではない文化ですよね。

そうです。アメリカではお弁当が支給されるのは貧困な家庭の子どもで、それをもらっているってことは家が貧乏だということが友達にバレてしまうから、みんなこっそりと隠れて食べているのが現状です。そしてもうひとつ、池谷先生たちもそうだと思いますが、何より先生たちが本当に真面目で優秀。

ーありがとうございます(笑)。でもそうだと思います。みんな本当に一生懸命に頑張っているから。

みなさん、学校のため、そして生徒のために、とんでもないくらい長時間、黙々と働いてらっしゃる。本当に素晴らしいですよ。尊敬します。あと日本では、家庭の裕福度とか住んでいる地域などに関係なく、基本的には誰でも同水準の教育が受けられますよね。やはりアメリカはそうではありません。

ーアメリカは地区によって教育レベルがまったく変わりますよね。

その地区に住んでいる人の不動産にかかる税金の一部が教育税の大きな比重になる仕組みなんです。例えばシリコンバレーみたいな不動産価値の高い場所では、どんどん新しい教育が実践されるし、逆にゲットーとかスラム街みたいなところだと、住みたいと思う人がいなくて、不動産価値も低い。だから当然、教育税も少なく、そうなると優秀な先生も雇えないし、教科書すら買えない所もある。そんなことが普通にありますね。

ーその点、ヨーロッパはどうなんですか?

もうちょっと社会主義に近くて、そもそも教育は大学も含めて基本的に無料の国もたくさんあります。ただヨーロッパの教育で日本と違うのは、中学生になる前の年齢で、職人コース、専門家コース、学者コースって振り分けられること。

ーでも先にあったように、そこに優劣とか上下っていう感覚はないんですよね?

そうです。みんなそれぞれに仕事に誇りを持っている。それぞれに優れた部分が違っていて、どれも素晴らしいっていう価値観が根底にあるのかもしれません。やはり日本が目指すとすればそっちだと思います。しかし残念ながら、今はアメリカ型の競争社会になってしまいましたね。