お知らせ

2021.09.03 中学 高校 新コース

[対談]違いを尊重し、好きなことや得意なことを認め、伸ばせる教育のために。

坪谷ニュウエル郁子さんにお話をうかがいました

東京インターナショナルスクール 理事長、国際バカロレア日本大使である坪谷ニュウエル郁子さんのお話です。教育に対する想いや考えをぜひ皆さんに共有したいと思いました。来年度新設の「創造コース」のヒントもたくさん。後編もお楽しみに!

プロフィール

神奈川県茅ケ崎市出身。イリノイ州立西イリノイ大学修了、早稲田大学卒。
1985年イングリッシュスタジオ(現東京インターナショナルスクールグループ)設立、代表取締役就任、1995年東京インターナショナルスクールを設立。理事長就任。同校は国際バカロレアの認定校。
その経験が評価され、2012年、国際バカロレア(IB) 日本大使に就任。文部科学省とともに、教育の国際化の切り札となる国際バカロレアの普及に取り組んでいる。

違いを尊重し、好きなことや得意なことを認め、伸ばせる教育のために。(前編)

勉強ができなくても、長所はある。誰もやらないなら、私がその教育を。

ー大学進学時にアメリカに渡り、その後、若くしてアメリカ起業していた坪谷さんが、日本に戻ってきて教育に関わる事業をスタートさせたのが今から36年前となる1985年。それにはきっかけになるような出来事や原体験があったんですか?

大きく2つあります。1つ目は小学校の時。私は割と成績がよくて、学級委員をやっていたんですけど、クラスにはあまり勉強が得意ではないSさんっていう女の子がいて、先生からその子に算数を教えるようにお願いされました。だから放課後に学校に残って、Sさんに算数などを教えていたんです。そうやって2人で一緒に過ごしているうちに分かったことがありました。それは、Sさんは確かにかけ算とか学校の勉強は苦手でしたが、編み物がとっても上手だということ。

ーなるほど。そこにSさんの長所があったんですね。

そうなんです。手先がすごく器用で、かつ、忍耐強い。そうじゃないとあんなに上手に編み物はできません。それを知った時に、漠然と「それぞれの長所をきちんと見抜いて、それを活かせれば、誰だって自分の得意なことで社会の役に立てるんだ」と思ったんです。でもそういう教育って日本にもアメリカにもなくて。

ー「勉強ができる」ということだけが突出して尊ばれている社会ですよね。

その通りです。でも勉強はできなくても、例えば気持ちの優しい子もいるし、力の強い子もいる。好きなことや得意なことは、100人いれば100人それぞれに違います。そこから子どもたちがそれぞれに持っている長所を、いかに伸ばしていけるかということを考えだしました。例えばさっきのSさんが編み物の専門家になったとする。もしくはモノづくりが好きだった子どもが、大工さんになったとする。それって素晴らしいことなのに、日本の学校や社会では、そんなことよりいい大学に入ることが、すべての子どもの目標になりがちですよね? また子どもたちの中には、その学部の分野にまったく興味がなくても、有名大学だという理由で入学することもある。それはやっぱりおかしいなと感じます。

ー僕が学校で教えていても、そういう考え方で大学を選ぶ生徒はたくさんいますね。

自分に合っている仕事に就いているのであれば、どんな職業だろうと絶対に上下はないはずですよね? でも日本だと、例えば道路工事をやっている人を少し下に見たりする人もいる。それってすごく歪な社会と言えると思います。